わたしたちの国にっぽんは、四つの海に囲まれぽっかりと浮かぶ緑の宝石箱のように美しかったと百年前にわが国を訪れた世界の人々から称賛を受けていました。
四つの海から立ちのぼる水蒸気が、山々に降りそそぎ、森が育ち、川と刻まれ、また海へというサイクルが、温帯の中にあって最も穏やかに営まれていた、わが国は「木の国」だったのです。
この百年の人間の営みが、森や川や海を痛めてきました。そのことの反省で始まった二十一世紀。わが国はまだかろうじて六七パーセントの森林を国土に有しています。
そして今、地球温暖化を防止する有効な手段として森の再生が大きな潮流となり、わが国の森林政策となりました。
森を元気にするには、適度の間伐をしてあげることが一番。森に光が入り、下草が生えてくると、森が本来の力を取り戻すのです。
問題は、間伐した材を使ってゆくシステムが近年のわが国では失われていたこと。それを取り戻すのが、わたしたち「森をたてようネットワーク」の仕事です。
森をたてようネットワーク理事長 石出 和博
特定非営利活動法人(以下NPO法人)森をたてようネットワークは、森を愛し、また自然に恵まれた日本ではぐくまれてきた多様な文化を尊重することにより、一人ひとりの人生をつなげ、幸せにしていくことを目標とします。
「森をたてよう」、私たちはこの言葉に様々な思いを込めました。
ひとつは、建築に使われる木材の多くは、現在輸入によって賄われているのが現状です。近くの森、植林された人工林が蓄積を増やしているのに、利用されているのはまだまだごくわずかです。きちんと使うことによってこそ、森は守られる。その信念に基づいて、木の家を「たてよう」ということです。
また、小さな芽がやがて大木になってそびえ「たつ」ことを夢見て、色々な樹木を育て、森を広げていこうという決意も込めています。
さらに、お茶も「たてる」と言います。思えばこの日本で育まれてきた文化は、すべて森と密接な関わりがあるのではないでしょうか。いま敬遠され忘れがちになっている、脈々と過去から受け継がれてきたもの、そういうものを大切にしたいと考えています。森と触れ合う機会が少なくなってしまった現代、私たちが手にしたもの・失ってしまったものは何なのかもう一度ゆっくり考えてみませんか。
いろいろな「たてよう」を表したくて、敢えてひらがなのままにしました。私たちのこころざしを同じくしてくださる方々と手をつなぎ、大きなネットワークを作っていくことで、ひとりでは達成し得なかったことが出来るようになります。「森をたてよう」という言葉に共感していただけましたら、ぜひ一緒に参加してください。
20世紀は、かって経験したことのない激動の時代であった。
科学技術が飛躍的に進歩し、経済が著しい成長を遂げ、物質的には豊かな社会となる一方で、人口や食糧問題、そして地球環境問題といった新たな課題が発生し、近年、私たちを取り巻く環境は、非常に厳しい状況に直面している。
私たちの身近にある森を見た時、天然木を求めて山の奥へと分け入り、貴重な森林の伐採が今も続けられている。しかし、植林は手間暇がかかるため、切り出した後は自然に再生するのを待つのみで、簡単に手に届く輸入木材にその多くを頼るのが当然のこととなっている。
天然林の抜き切りを繰り返し、その全てを放置したままというやり方には、遠からず限界が訪れるとともに、海外においても、貴重な熱帯林や北方林が失われ、かけがえのない生態系の破壊につながっている。
近年、「森が死んでいる。」という言葉をよく耳にするが、「森が死んでいる。」とは「土」が死んでいることを表す。
手入れされない人工林は、地表まで光が届かないため土壌が痩せ、痩せた土壌では新たな生命は生まれない。森を再生させるためには、ある程度の木を伐採しなければならない。
つまり間引くこと、間伐が必要である。
森を生き返らせ森を守る活動として、森を再生する植林から間伐、間伐材の活用までを総合的に捉え環境共生型のネットワークの構築を進めることが必要である。
私たちは、何故この様なことになっているのかを見直すことを通じて、日本の文化の再構築に貢献したいと考えている。
森を愛する全ての方々とともに、森を守り育てることから快適で美しい生活環境まで、従来日本人が大切にしてきた木を巡る生活文化について、もう一度考え直す社会運動を展開する。
私たちは、このような現状を打開すべく、平成9年から「森をたてよう」をキーワードに「植樹祭」の実施、里山の視察、情報誌の発行を行うなど、森を愛する多くの人たちとともに活動を行ってきた。「森をたてよう」とは、単に植樹等による森の再生だけではなく、活動を通して木を巡る文化の再構築をも目指す、私たちの姿勢を表す言葉である。
今年度においても、札幌市定山渓の国有林において、北海道森林管理局のご協力をいただく中で植樹を行うとともに、「森の教室」の開催や情報誌の発行などを通じて、より多くの方々に私たちの考えていることの周知を図ってきたところである。
しかし、私たちが考えている以上のスピードで、森の荒廃は進み、取り返しの付かない状況になりつつある。このため、私たちは、この活動をより安定的、永続的に推進するとともに、大きな社会運動とするため、法人格の取得を申請するものである。
平成 16年3月12日